Brian Eno「Ambient #4 On Land」「オン・ランド」、レビュー

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皆様おはようございます。

おはようございますとはいっても、眠れないままAM4時を迎えようとしてるわけですが^^;

さてさて、今回は前回に引き続き、ブライアン・イーノのアンビエント・シリーズの作品レビューになります。

現時点では、僕が聴いたブライアン・イーノのアンビエント・シリーズは、「1」と、前回レビューで書いた「2」、そして今回紹介致します「4」です。

この「4」、「オン・ランド」は全体を通してかなりシリアスで重厚で悲壮感漂う音世界で、ともすれば、聴く人によっては「難解」、或いは「退屈」ともとれるアルバムだと思います。
それもそのはずこのアンビエント・シリーズは、CD内のライナーノーツ、解説にも書かれていたように、当初は4チャンネルのサラウンド方式を意図したアルバムなんだそうです。
しかし当時はまだそういった多数のチャンネルのサラウンド方式のスピーカー、音響設備が一般化されていなかったらしく、何よりも本人自身すらそういった音響システム、スピーカーを所有していなかったらしいのです。思索が時代を先越した、とでも言うべきでしょうか(これと類似した話で、初期の頃の、アナログシンセの単音楽器として、モノフォニーな楽器から作品を創り上げた歴代の電子音楽の偉人達の音楽への情熱、今みたいにポリフォニーで、和音はもちろん最大発音数の多い、システマティックなシンセに頼りっきりの自分としては、この方々にはとてもじゃないですが足を向けて寝られませんね)。
そして当時の妥協案として、このアルバムの裏ジャケにもイラストで記載されているように極めてアナログな手法で、何とか3ウェイ方式のスピーカー配置で聴く事を推奨していたみたいです。
今の時代なら、5.1チャンネルはもちろん7.1チャンネルサラウンドや、それに準じた「ブルーレイ・オーディオディスク」なるメディアも台頭してきている事ですし、最近はマイク・オールドフィールドの作品群が5.1チャンネル化されてるので、このアンビエント・シリーズも5.1チャンネル化されて発売してほしいですね。

肝心のアルバム内容なんですが、「鏡面界」は多分誰が聴いても、誰しもがその美しい音世界に感嘆するものと思いますが「オン・ランド」は、前述の通り、少し難解で、全体的に暗澹とした音世界で好き嫌いははっきり分かれる内容だと思います。

「鏡面界」が田園風景などの陸地の音世界だとすると、「オン・ランド」は「深海」「未知の生物」などが連想されます。
1曲目の「Lizard Point」は、1曲目の幕開けと同時に正に深海を漂いはじめたかのような曲で、深海に潜り、未知との生物との遭遇をイメージさせるような音が込められており、水中の「ブクブク」とした音や、何かの生き物があちらこちらでざわめいているかのような音から幕を開けます。
2曲目の「The Lost Day」は、更に深海の奥深く、そのくせ虫のさえずる音がきこえたり、鉄の、打楽器とも違った金属質な音が規則的なリズムを刻み、その最中、常に重低音の轟音が曲の支配下に起き、その上をリードシンセで低音域の旋律がなぞります。
3曲目の「Tal Cort」は、水中の「ブクブク」音と低音域のリードシンセで幕を開けます。
そしてピロピロした音がミニマルに鳴り、その上をシンセが駆け巡り、規則的に鳴る重低音のベース音が、ドローン的な音の役割を担っているように聴こえます。
4曲目の「Shadow」は民族音楽色の強い曲です。
虫の羽音、さえずりから始まり、タブラの低音部にも通ずるような、揺らぎのあるシンセの音、風音、そして民族的な、中東の歌唱法を思わせるリップノイズの生々しい女声の歌声が入ってきて、たまにぶつ切りで和田アキ子さんではありませんが「ハッ」と区切るところ、これはタイトルの「Shadow」を意図した、気付いたら「ハッ」とさせる「影」が四方八方に出来ることを示唆しているのでしょうか。
5曲目の「Lantern Marsh」、静かなシンセのベース音に、アンビエント・テクノを思わせるシンセ音の反復、そして控えめながらも曲全体を通し、常に鳴っているリバーブの深くかかった鉄と鉄のぶつかるような音、何かの悲鳴にも聞こえる音、、、難解です。
6曲目の「Unfamiliar Wind」、これまたアンビエント・テクノ、ディープ・ハウスの上モノを思わせるシンセの反復の中、連発して鳴らされるパトカーのような音、そしてまたもやドローン的な重低音のベース音、猿の雄叫び、カエルの鳴き声、鳥類のさえずりの循環、、、やっぱり難解です。
7曲目の「A Clealing」、この曲では「鳥類の鳴き声、さえずり」が、更に明瞭に聞こえてきます。
中音域のシンセ音とブヨブヨしたシンセのベース音がそれを、鳥達の音を彩ります。
8曲目の「Dunwich Beach,Autumn,1960」、ディレイのかかった、エレピの音かベルの音か、シンセは自由にもとの音を書き換えてしまう事が可能なので、何の音かとは具体的に説明がつきませんが、低音域、中音域のディレイのかけられたシンセ音が造り出す、ラストの曲を飾るに相応しい儚い色香のする、哀愁漂う曲です。

このように自然音を使った、ミュージック・コンクレート作品であると同時に優れた電子音楽・環境音楽作品であることは疑いようのない事なのですが、やはりイーノが当初、そのつもりでいた、或いはそれ以上のスピーカーシステムで聴かないとこの作品の醍醐味、妙味は味わえないと思うのです。何せそれがイーノの意図した事であるわけですから。
しかし最後に付け加えるならばゆっくりと聴きながら眠りにつける作品がこの「オン・ランド」だとしたら、朝方、起きてから聴くのにもってこいなのは「鏡面界」といったところですね。
ちなみに下記画像はLPに見えますが、僕が数ヶ月前に買った紙ジャケット版のSHM-CDです。image